応用情報技術者試験に3ヶ月(60時間)の勉強で合格したので、そこから得た学習方法と試験対策についてまとめてみました。
はじめに
応用情報技術者試験は、決して簡単な試験ではありません。学習にかかる時間は人によって全く違います。
本稿では、期間を長く取り、祝日を除いた毎日1時間を学習に充てることで、学習への効率を高めることを目標としています。基礎知識があまり無い方は、もう少し時間がかかるかもしれません。
3ヶ月60時間の目安は、「実務経験3年以上」です。業務範囲も人によって異なりますから、本稿を参考にしていただける場合は、自己の環境にあわせて学習時間の調整を行ってください。
しかしながら、「長い時間やれば身に付く」とは限らないのが勉強です。効率を重視して取り組みましょう。
応用情報技術者とは
こちらにあるとおり、システム開発において応用的な能力を発揮し、技術的問題を解決できる者、とされます。
基本情報技術者を合格した後のステップアップ、あるいは、高度情報系資格の登竜門として人気の試験ですね。
応用情報技術者のメリット
実際のところ、あまり実務に即していない資格ではありますが、これを取得することには充分なメリットがあります。
就職や転職などのことを考えると、無資格者に比べ有利になることは間違いありませんし、資格手当などの制度を敷いている企業も珍しくありません。資格取得を奨励して一時金が出る企業や、資格が昇格や昇給の条件となっている企業もあります。
高度資格に比べると見劣りするかもしれませんが、有用な資格であることに間違いはありません。
基本情報を先に取得すべき?
いいえ。なぜなら、応用情報以上の試験と違い、基本情報を合格しても他の試験の一部免除制度が一切ないことに加え、応用情報は実質的に基本情報を包含する資格ともいえます。
もし、充分な自信があるなら、応用情報技術者試験を第一のステップとして受験するのは、間違った選択ではありません。
しかし、自信が無かったり、時間をかけてまずは基礎から取得したい場合は、基本情報から取得した方が良い結果になるかもしれません。
もちろん、更に上位の資格をいきなり受験することも可能です。
3か月で応用情報技術者試験に合格するための学習法
実際に、3か月の学習期間で応用情報技術者試験に合格した経験をもとに、勉強方法をまとめてみます。
学習の方針
午前・午後の学習に対しての学習方針を立てることにします。応用情報技術者試験の出題範囲は広いとはいえ、要点をきちんと把握し、適切に学習していけばそこまでの難易度ではありません。
応用情報の合格ラインは、午前・午後ともに60%です。少なく見積もって1/3は外しても良いのです。まずは戦略を練っていきましょう。
スケジュール
1日1時間として、40時間(2か月)を午前問題に、20時間(1か月)を午後問題にあてることにします。しかし、「○○の分野を○日までに終わらせる!」などといった厳密なスケジュールは立てないようにします。
学習に対するコストは未知数です。普段の工数見積もりのように見積もることも不可能ではありませんが、厳密なスケジュール通りに進めることは心理的負担が大きいものになります。スケジュール通りに進まないと、焦りがストレスに直結し、次第に学習効果が低下してしまいます。
しかし、試験当日までに学習が間に合わないようでは話になりませんから、大まかなスケジューリングはどうしても必要です。
午前の学習
実は応用情報の午前試験は、過去問の流用が非常に多く、中には文言すら変えずにそのまま出されている問題も多数あります。
となれば、学習方法はひとつで、「過去問をひたすら解く」ことに尽きます。
過去問を反復学習する
応用情報技術者試験ドットコムの、過去問道場は非常に有効です。下手な書籍は必要ありません。午前の学習はこれで完結します。
概ね、100問解いて80%以上の正答率を確保できるまでは、この学習方法を継続しました。
点数アップのために
とにかく、数をこなすことが大切です。先ほど紹介した過去問道場は、スマートフォンなどの携帯端末でも動作するため、通勤中などの隙間時間に学習を進めることができます。
解説を読みながら反復して学習を進めます。解説を読んでもわからないような問題はどんどん飛ばしましょう。最初は殆どわからないようなことでも、次第に理解できるようになりますので、焦らなくても大丈夫です。
間に合わない!
まずは、午前問題を突破しなくては話になりませんから、午後問題を学習する時間を削ってでも午前問題を進めましょう。
最悪、午後問題の対策は全くしなくても、午前問題が完璧であれば、その応用で解ける問題が多いので、充分に合格ラインが狙えます。
午後の学習
午後試験は、記述式の設問が多くあります。データベースやアルゴリズム(プログラミング)系は、明確に正解がある設問が多いのですが、マネジメント系、ストラテジ系などに多い記述問題は、国語力を問われる試験でもあります。
如何にして限られた文字数で的確に正解を導けるかが焦点となってきます。
戦略を考える
応用情報は11問中5問(うち1問は必須)を解答する選択問題です。課目は以下のようになっています。
- 情報セキュリティ(必須)
- 経営戦略
- プログラミング
- システムアーキテクチャ
- ネットワーク
- データベース
- 組み込みシステム開発
- 情報システム開発
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム監査
どれを選択すべきか迷いますが、IPA公式で実際に過去問が公開されていますので、こちらを一度解いてみて、手ごたえのあるものを選びます。
詳細設計以降の工程を主に担当されている方は、プログラミングやデータベース、情報システム開発などが候補となります。逆に、要件定義やマネジメント、基本設計などを担当している方は、サービスマネジメント、プロジェクトマネジメント、システムアーキテクチャなどから選ぶのがよいでしょう。
また、システム監査は過去の傾向から、比較的簡単な問題となっていることが多く、他に選択肢が無い場合に有力です。
公式サイトの過去問を解く
PDFを気軽に印刷できる環境がある方は、こちらもよいでしょう。問題と解答、講評のPDFがIPA公式にありますから、まずはこれを印刷して一通り解きます。
データベースやプログラミングなどの明確な正解がある設問は、絶対に落とさないようにします。国語力の問われる記述式の問題では、解答例と講評を見ながら解き方のコツを覚えます。「これが正解!」というものは無いので難しいところではありますが、総じて記述問題は採点が甘いような気がします。とにかく必要な文言を漏らさずに書いて、的が外れていなければ、点数が貰えるように感じました。
また、問題文がかなり長文となっていることが多く、限られた時間内で的確に答えを導き出すには慣れが必要です。
課目を絞って直近の5年分を目標として取り組みます。
本を読む
午後対策は本を1冊読むのが良いかもしれません。解き方のテクニックも大切ですが、基礎も勉強するようにしましょう。
モチベーション維持のために
学習には、モチベーション維持が必要不可欠です。
達成感を継続する
毎日、1時間を必ず勉強に充てる。というルールを課したとして、そのモチベーションが3か月間続くでしょうか。終わりの見えない漠然としたルールは、時に心理的障壁となってしまいます。
まず、本を買ったらそれを読破することを目標としましょう。本の読破という達成感が次に繋がります。あるいは、過去問の正解率80%という目標も良いかもしれません。細かいタスクをチェーンさせることにより、モチベーションを維持します。エンジニア風に言うなら、「アジャイル型」の学習というわけです。
規則正しい生活を
睡眠不足の頭に情報をいくら詰め込んでも効果は薄いです。最近、脳科学の分野で「睡眠不足によって学習効率が下がる」という研究結果があるそうです。詳しいことが知りたい人は、「勉強 睡眠」などのキーワードでググってみましょう。
しっかりと休息を
休日は勉強なんていう煩わしいことをやりたくありませんよね。きちんと休息を取りましょう。普段忙しいならなおさらです。好きなことをするもよし、存分に睡眠を取るもよし。趣味に時間を費やすもよし。余裕(モチベーション)があれば、勉強するもよし。
試験対策
午前
午前で大敵となるのは、時間です。与えられた150分の時間をどう使うかが重要で、この配分を間違えると、得点を落としてしまう重大な要素となります。
午前問題は全部で80問ほどあります。1問あたり2分に満たない時間をどのように振り分けるべきでしょうか。
問題の優先度を決める
午前では、計算問題がいくつか存在します。これらは簡単なものもあれば、おそろしく時間の掛かるものもあります。真面目に順番に解こうとすると、計算問題で余計な時間を取られ、後半の問題を解く時間が無くなってしまうかもしれません。逆に、用語の意味を問う問題などは数十秒も掛からないでしょう。
時間の掛かる計算問題も簡単な暗記問題も同じ1.25点の配点ですから、時間の掛かる問題に気を取られて解ける問題が解けなくなっては勿体ないですね。
10秒で問題を読み、1分以内に解けそうであれば取り組み、そうでなければ次の設問に進むことで、計算問題などの時間のかかる問題に掛ける時間をかなり確保することが出来るはずです。
午前問題の注意点
回答欄がすべて同じ形なため、書き間違いが非常に起こりやすいです。問題文の番号と、解答欄の番号を常に照らし合わせる習慣を身につけましょう。
午後
こちらも時間との戦いですが、午後では問題の予測がつきません。もしかすると、当初予定していた課目の変更を迫られることがあるかもしれません。
28年秋の試験では、情報システム開発で「モジュール結合度」の問題が出ました。これは最近のフレームワーク指向の開発から考えると、馴染みのない問題です。実務で開発業務に携わっていても、設計の根幹にかかわっている方でなければ、なかなか難しい問題ではないでしょうか。
こうなると急遽方針転換を迫られることになり、パニックになりかねません。そういった状況もしっかりと想定し、次に得意な課目についても決めておくとよいでしょう。
時間の配分
午後では、時間こそ150分と午前と同じですが、その配分が異なります。1問1問のボリュームが非常に大きいですから、「解けないから次へ」というわけにはいきません。
150分で5問なので、1問あたり30分の時間が与えられることになります。ここでは、見直しなどの時間を確保するため、各問25分を目標として取り組みます。このとき、時間を超過したら解答が完成していなくても、迷わず次の問題に移行することが大切です。
先ほど述べたように、午後問題は、どの問題にどれだけ時間が掛かるか見当がつきません。20分で終わる問題もあれば、40分かかる問題もあります。これらは、午前問題と違い、よく問題と設問を読み込んでみないと分かりません。
また、課目あたりの設問についても、わからなければ迷わず問題を後回しにするという判断力が必要になります。ひとつの問題に時間を掛けるあまり、他の簡単な問題を落とすことが無いよう、時間の配分には充分注意しましょう。
問題の読み方
午後問題は、大抵の場合、本文と設問の2つのブロックに分かれています。事例を読むだけでも大幅に時間を削られてしまいますし、設問から問題の要旨を抽出する作業も時間がかかります。
頭から順番にずっと読んでいくと、確かに全体像は把握できますが、時間的無駄が多く、設問ごとに解答の材料を拾い集める時間が減ってしまいますので、まず設問から読んで問題の主旨を把握した上で、本文を読むことをお勧めします。
たとえば、設問が「本文中の[ a ]に入れる適切な字句を、15字以内で答えよ」であれば、[ a ]の付近に解答の鍵となる記述が記載されていることが多いです。これは、大抵の場合、本文を全て読まなくても解答できます。
反面、「○○が○○である理由を○字以内で述べよ。」などの理由を問う問題は本文を広く読まなければ解答できない場合が多いです。こういう問題は、とりあえず飛ばしておいて、短時間で確実に解ける穴埋め問題などを先に解くとよいでしょう。
「下線①について、こう考えた理由を○字以内で述べよ。」などの問題は、その下線以前に解答がある可能性が高いです。下線部を探し、それより前の文をよく読めば、答えが見えてくるはずです。
午後問題の注意点
過去問題をいくら演習していても、今までにない問題が出てくることがあります。焦らず、まず他の問題を解き、余った時間で他の問題へ移行するか、その問題を解き続けるか判断するようにします。とにかく、時間は限られていますので、出来ることからやっていくのが大原則です。
午後必須問題「情報セキュリティ」解説
午後の必須問題を、本稿の解き方に従って記事にしてみました。よろしければ一緒にどうぞ。
まとめ
応用情報技術者試験は、広い知識を問われる試験ですが、対策を練れば、比較的短時間の勉強で合格することができます。有用な資格ですので、ぜひ取得して次の高度試験に繋げましょう。